職場環境等の改善・ストレス軽減
職場環境等の改善を通じてストレスを軽減
・職場環境等へのアプローチのポイント
『いい仕事をするのに、多少のストレスは必要』と言われるように、新しい課題に挑戦し
それを乗り越える経験は人を成長させ、また職場の活性化にもつながります。
しかし仕事のしにくさからくるストレスは疲労感を増大させ、達成感もなく、労働者の健康問題だけではなく、生産性の低下や事故にもつながりかねません。
こうしたストレスが職場環境等の改善における改善対象となります。
仕事のストレスに関する代表的な理論である『仕事の要求度ーコントロールモデル』では、
仕事の要求度(仕事量や責任など)と仕事のコントロール(自由度や裁量権)のバランス
特に仕事の要求度に見合うように仕事のコントロールを与えることが重要とされます。
また、『努力一報酬不均等モデル』では、仕事上の努力と比べて、ねぎらいがない、
あるいは将来が不安定だなど心理的な報酬が少ない場合にストレスフルになるとしています。長時間労働や過大な作業量を避けることに加えて、作業の量や責任に見合うような裁量権報酬をもらえるようにすることも職場環境等の改善の方法の一つになります。
アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、次のとおり職場環境等の改善を通じたストレス対策のポイントを挙げています。
①過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
②労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
③仕事の役割や責任が明確であること
④仕事の将来や昇進・昇給の機会が明確であること
⑤職場でよい人間関係が保たれていること
⑥仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザイン
されていること
⑦職場での意思決定への参加の機会があること
しかし、目に見えない仕事のストレスの対策は、
どこから手をつけていいか分かりにくいものです。
むしろ職場のメンバーが感じている働きにくさに注目することや、職場のレイアウトや
物理環境の改善から着手することが、
仕事のストレスの改善に効果的な場合が多くあります。
「事業場内メンタルヘルス推進担当者テキスト」より一部抜粋
(中央労働災害防止協会 事業場内メンタルヘルス推進担当者テキスト編集委員会編著)
平22年1月
メンタルヘルス対策のための環境改善の流れ
ステップ1.職場環境等の評価
- 現状調査を行う
仕事のストレス判定図などが利用できる
仕事のストレス判定図では、ストレス調査により職場単位でのストレスを
数値化することができます。
ステップ2.職場環境等のための組織づくり
- 当該職場の上司、産業保健スタッフを含めた職場環境等の改善のためのチームを編成する。必要に応じて上司に教育研修を提供することも。
事業場の心の健康づくり計画や(安全)衛生委員会と連携することが重要
さらに職場環境等の効果的な推進の為に、その職場の労働者からも代表者を選んで
参加してもらうとよいでしょう。
ステップ3.改善計画の立案
- 産業保健スタッフ等、管理監督者、従業員が参加して討議を行い、職場の環境等の改善計画を検討する。
ヒント集、MIRRORなどのツールを使用したグループワーク研修を実施する。
リストアップされた問題に対して、関係者が議論したり、労働者参加型のグループ討議な どを行い改善計画をたてます。
ステップ4.対策の実施
- 決定された改善計画を実施し、進捗状況を確認する。
対策の実施状況や効果について、発表会などをあらかじめ計画しておくと
進捗管理が容易になります。
ステップ5.改善の効果評価と改善活動継続
- 現状調査を再度実施し、改善がなされたかどうか確認する。
十分な改善がみられない点について計画を見直し、実施する。
効果評価には、仕事のストレス判定図などが利用できる。
対策の前後でストレス調査の結果や健康診断などの健康情報を比較するなどの方法があり ます。 職場環境改善や医療費や疾病休業の軽減に効果を示すには数年以上かかるため、効果評価は急ぎすぎず、対策の継続が重要です。